ネット上で大騒動!大河ドラマ「平清盛」における「王家」という言葉の由来とは?

大河ドラマ「平清盛」で「王家」という表現がよく出てくるのですが、これについてネット上では大議論をやっている掲示板もあります。

論点をまとめてみますと、
肯定派…王家という表現は当時の史料に色々出てくるから問題はない。
天皇家とか、皇室とかいう表現は明治以降の言葉だから、逆に、当時の子供がしゃべっているのはおかしい。

否定派…王家という言葉は聞いたこともない言葉で歴史的におかしいのではないか。天皇家というべきだ。

ということのようです。これはどちらが正しいのでしょうか。結論から申し上げますと、まだ調べは十分行き届いていないものの、肯定派の方がやや主張に無理がないように思われます。

1,「王家」という表現は史料に色々登場しているというのは、事実である。南北朝時代の天皇陛下ご自筆の日記等に出てくる。

例えば、北畠親房『神皇正統記』では、
「これより清盛天下の権をほしきまゝにして、程なく太政大臣にあがり、其子大臣大将になり、あまさへ兄弟左右の大将にてならべりき。この御門の御世のことならぬもあり。ついでにしるしのす。天下の諸国は半(なかば)すぐるまで家領(けりやう)となし、官位は多く一門家僕(かぼく)にふさげたり。王家(わうか)の権さらになきがごとくになりぬ。此天皇天下を治給こと七年。二十三歳おましき。」
「頼朝勲功まことにためしなかりければ、みづからも権をほしきまゝにす。君も又うちまかせられにければ、王家の権はいよいよおとろへにき。」
というように、ちょうど源平合戦の頃の天皇家を表現して「王家」といっているのです。
(引用はhttp://www.j-texts.com/chusei/rek/jinno.htmlより)
なお、2ちゃんねるでは王家という表現が出てくる資料として、下記のようなコピペが出回っているようですが、このコピペはどうなのでしょうか。
どうも疑問です。
・「聖徳太子伝暦」(917年、藤原兼輔)
・「神皇正統紀」(1339年、北畠親房)
・「大宝令」(701年)
・「養老令」(757年)
・「玉葉」(1164~1200年、九条兼実)
・「吾妻鏡」(1300年頃)
・「平家物語」(1309年以前)
・「花園天皇宸記」(1310~32年)
まず「大宝令」(701年) は完全に残っていません。電子テキストもないようです。確認はできない状態です。「養老令」(757年) は完全に残っていますが、「王家」として出てくるのは
ちょっと見た限りではありませんでした。ひょっとしたら神祇官の王家(白川伯王家)と混同しているのかも知れませんが、これは「平清盛」で言うところの王家と全然違います。
(以下引用)
これがのちの白川家で「伯家〔はくけ〕」とも呼ばれます。また、特に姓〔せい〕がなく「○○王」と名乗っているのを「王氏〔おうし〕」と言いますが、伯に任じられた人は臣下でありながら姓を棄てて王氏を称する習いが生じ、このことから白川家は「王家」とも呼ばれます。(http://www.sol.dti.ne.jp/~hiromi/kansei/o_kan_jingi.html)

平家物語は元和九年の流布本で全文検索を掛けて見ましたが王家という言葉はヒットしません。
「花園天皇宸記」は巻3元弘元年十月の条に「王家之耻」という言葉が出ているので間違い無いと思われます。
確認できないのもありますが、取り敢えず現時点で裏が取れたのは南北朝期の『神皇正統記』『花園天皇宸記』の2つです。ただしこの2つは相当重い。軍記物のようなものではなく、朝廷の公式記録といっていいものだからです。
花園天皇宸記…95代天皇であらせられる花園天皇が、自筆で残された日記をまとめたもの。
神皇正統記…南朝の忠臣・北畠親房が後村上天皇に献上した書物。天皇家の万世一系を強調する狙いがある。

なお、鎌倉期に天皇家を何と言っていたのかは実は歴史学でも分かっていません。詳しくは下記のページを見てください。
http://ktbt-cinnamon.at.webry.info/201108/article_16.html

2,天皇家とか、皇室とかいう表現は明治以降の言葉だというのも正しそうである。詳しくは下記のブログ(産経新聞編集委員で時代劇の時代考証に詳しい大野敏明氏の「歴史ドラマのウソホント」を御覧ください。
(以下引用)
この会では千利休(石坂浩二)が「天皇」というが、当時は天皇とはいわない。「天子(てんし)様」とか「帝(みかど)」と言ったであろう。

 「天皇」と書いて「すめらみこと」と訓ずるが、これを音で「てんのう」と一般的に読むようになったのは、明治以降である。明治初年ですら、一般の武士は「天皇」といわれてもきょとんとしていて、「京の都の天子様」といわれて、ようやく理解できたといわれている。
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/natnews/topics/508679/

これ、実は昨年の大河ドラマ「江」の時代考証を批判する新聞のコラムなのですね。大野氏に批判されてNHKは今年改めたのではないでしょうか。
スポンサーサイト
プロフィール

松平俊介

Author:松平俊介
松平俊介(まつだいら・しゅんすけ)
雑誌ライターやwebディレクターをしております。webデザインからwebマーケティング、ライターまで何でもやっております。これまでに色々なプロモーションを手がけて参りました。過去には週刊SPA!等に関わっておりましたが、現在は「連載JP」(東京産業新聞社)や、neverまとめ(NHNジャパン)を中心に執筆しております。
趣味は街歩きと歴史研究です。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR