「意識高い系」皇帝の乱立ー常見陽平説で五胡十六国を解読する

人材コンサルタントの常見陽平氏が、『「できる人」という幻想』(NHK出版新書)という本を書いています。
なかなか、社会学的にも歴史学的にも面白い本です。無論ビジネス書としても読めます。が、これを読んで実は「五胡十六国の皇帝って、今風に言えば『意識高い系』のイタイ人が多かったんじゃないかな?!」とふと思ったんですね。

エライ、突拍子もない感想で、おそらく常見氏も驚かれるのではないかと思うんですが、実は昨日訳した『魏書』匈奴劉聡伝とも関わりがあります。

『魏書』匈奴劉聡伝を今風にいうと、

「曹操の魏がせっかく中国を統一しようとしていたのに、劉備と孫権という訳のわからない男が、ベンチャー国家である蜀・呉が建国してしまった。劉備たちが荒らしまわったおかげで、『五胡十六国』というベンチャーかぶれの変な小国が次々に乱立し、戦争をお互いにおっぱじめるので中国の政治はかえってメチャクチャになった。魏の後継者である北魏王朝はこれらの変な小国を討伐して戦争をなくし、民衆の生活に貢献した」
と書いてあるんですね。

これ、常見陽平さんの説と実は似ているところがある。
常見氏の説を大変乱暴に要約しますと、
「スティーブ・ジョブスのプレゼンの猿真似をする『意識高い系』の中身の無い人間が多くなり、起業ブームに煽られて、
単に『起業』『株式上場』を目指すだけの若い経営者も増えてしまった。起業家が英雄視された挙句、タレントまがいの者、政治家まがいの者さえも出てきてしまった。『できる人』幻想の成れの果てだ。成功している起業家ももちろんいるが、そういう人は大企業などで経験を積み、地道に苦しんでやってきた人だ。起業家を英雄視する社会、若者に異様に高い理想を求める現代は異常だ」
というものになるかと思います。

五胡十六国の皇帝たちは、劉備と孫権という、庶民出身の大英雄に憧れるあまり、今で言えば市長程度の領地しか持っていない人間でも平気で建国するようになっています。三崎良章『五胡十六国』(東方選書)を見ると、建国して数年しか持たないものさえも平気で皇帝を名乗っています。

例えば現在の山東省だけしか領地がなかった南燕国は建国から12年で滅亡、その他、皇帝を名乗ったものの国として形を成さないまま滅んだ国が五ヶ国、50年以上持たなかった国は五胡十六国中十国を超える…というありさまでした。

私は、五胡十六国の歴史を調べていてなんでこんなに短期間に皇帝に即位して簡単に滅亡するのかまるでわからなかったのですが、常見氏の「『できる人』幻想の成れの果て」という話を読んで、どーもこれは、五胡十六国の皇帝たちは一種の建国ブームみたいなものに踊らされて、「秒速で中国を統一する」みたいな痛い考えにとりつかれていた人が少なからずあったんじゃないかなあとも思えてきました。

ちなみに某秒速1億氏まがいの言動をする人は、五胡十六国の皇帝たちには割りと有りふれており、何個か国を作ってはつぶし作っては潰ししてよくわからないうちに歴史から消えていった人も居ます。歴史は繰り返す。「地道に苦しんでやってきた人」も無論いるわけで、その典型的な例が北魏の太祖でしょうか。

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松平俊介

Author:松平俊介
松平俊介(まつだいら・しゅんすけ)
雑誌ライターやwebディレクターをしております。webデザインからwebマーケティング、ライターまで何でもやっております。これまでに色々なプロモーションを手がけて参りました。過去には週刊SPA!等に関わっておりましたが、現在は「連載JP」(東京産業新聞社)や、neverまとめ(NHNジャパン)を中心に執筆しております。
趣味は街歩きと歴史研究です。

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